
今年に入ってから、大英博物館では、長い間閉まっていた61号室がオープンしました。ミイラが展示してある続きの部屋で、何が起こっているのか気になっていたのですが、10年以上かけて修復をした、紀元前1350年頃のネバムン(Nebamun) という、アムン神殿での会計をしていた男の墓の壁画が、美しく、分かりやすく展示してあり、又当時のこまごまとした生活の道具も展示してありました。新聞などでも、大々的に「古代のミケランジェロ!」と形容して、エジプト絵画の約束事を無視した、現実的描写を高く評価しています。
さて、上の絵は、ネバムンの死後も生きている時と同じように、富をもっているようにと、描いた農民と家畜の絵の一部です。古来からの形式どおり横向きのこの少年。やはり形式どおり前向きの美しい眼、真黒な輪郭でおおきくて、黒髪と相まって、会ってみたいような美少年です。そして、芸術的な側面から見ると、この牛たちが、とても生き生きと現実的に描かれていて、形式的でないのに気が付かれると思います。しかも重なった所は形式化されていて、いかにもエジプト的です。

ネバムンはきっと狩りが趣味だったのでしょうか。ナイル川に小さな舟を浮かべ、鳥を何羽も束にして捕まえています。後ろには妻が矢筒を抱えて立っていて、子供は父親の足の間に座り、パピルスをつかんで、舟を静止させていて、家族みんなで楽しんでいるようです。そして、逃げまどう鳥の様々な翼の様子、そして、ネバムンの前で鳥を3羽も捕えている猫の必死の様子もおもしろく、空間恐怖症のようにそれらの間にトンボを飛ばしています。

死後の庭にも池があり、魚や水鳥が満ち溢れています。周囲は、涼しげに、ざくろ、ナツメヤシ、棕櫚の木で囲まれていて、右上方にはネト女神がいて果物を与えてくれていますが、ロングヘアーに、胸から下のドレスで、今っぽいです。池も、現代とあまり変わりなくて、とても3300年前の絵とは思えません。

そして、死後も絶対に楽しみたい宴会!
右の樽はビールで、飾りをいっぱいつけてます。床に座る楽師が笛を奏で、手ぶりをつけて歌手が歌い、美女が裸でなまめかしく踊っています。ピー、ヒョロロと聞こえてきそうに動きのある楽しい絵です。ダンサーのお腹のしわはおかしいし、指先もかわいらしい。上に見える客人の女性のドレスは足が透けて見えて、とてもおしゃれです。カーリー・ヘアにプリーツいっぱいのドレスに大きなイアリングをつけた楽師は、まったく今までなかった、前向きと斜め向きに顔が描かれていて、側面から顔を描くエジプト絵画の慣習を無視しています。
ネバムンは永遠に続く死後の楽園を、今日も楽しんでいるのでしょうか。
