
一昨日シェフィールドという北の街へ行きました。ここは一四世紀のチョーサーのカンタベリー物語にも出てくるナイフやフォーク、鋼鉄の産業都市として有名な所だったのですが、昨今は「イギリス一空気のきれいな街」というキャッチ・フレーズに変わり、長い間の産業はすっかり衰退し、ただの北部の一都市となってしまいました。
さて、駅に降り立つとビビアン・ウエストウッド展の大きな広告が目に入りびっくり。何とこのビビアン展はロンドン、ビクトリア・アンド・アルバート博物館で、2004年に催され大人気のものだったのですが、私は見ずじまいだったので、残念に思っていたのです。上の写真はナオミ・キャンベルがはいて転んだというもの。履いたら危ないがオブジェとしては美しいものです。

パンクの女王になる前のかわいいビビアン。幼いころよりファッションに興味あり自分なりに工夫したものを着ていた。
さて、この展覧会はビビアンの1970年代からの創作活動を見せているのですが、おもしろいのは変化がめまぐるしい事で、さすが単なる「着るもの」ではなくアートなのだと納得させるものでした。まずは彼女の生い立ちですが1941年生まれで、母親は織工で、父親は靴職人の家の出、北部出身の典型的労働者階級です。美術学校へ行くも中途退学、工場で働いたりして結婚、離婚後、マルコム・マクラーレンと出会い、キングス・ロードで小さな中古レコード、古着など売りはじめ、それから服のデザインを始めたのですが、それがすごい!反抗心一杯でまさにパンクの心意気。

こんなシャツとか、女王の唇に安全ピンを刺したパターンとか、靴のヒールの後ろから釘の尖った方が出ていたり、今では若者がよく来ている袖をきりとったままのTシャツとか、体制に反対のメッセージがこれでもか・・・と出ていておもしろい。
その後は対局になり、歴史を顧み、海賊や遊牧民のイメージからとか、美術館の絵画、鎧、16,7世紀に流行ったスリットや、家具や陶磁器の模様に至るまで、デザインのインスピレーションにしていて、下の写真のコルセットやスカートを膨らませる金具を使うファッションまで制作している。

又、英国の紳士服のテーラーの技術を研究し、又英国らしい風合いのツイードや、タータン・チェックの柄を使ったりと、北の匂いも強く、シェフィールドで見るのは適しているなと感じました。しかし、パンクの反抗心はいくらエレガントなドレスになっても変わらず持ち続け、きちんとしたテーラー仕立てを想像すると、ぎょっとするような胸や腰の形がそのままのカットで、足の動きまではっきり出るようなスーツであったり、又何年か前には、女王から勲章を受け取った時のビビアンのドレスはふんわりとエレガントなロングドレスでしたが、何とシースルーで、下着をまったく着けずに女王の前に出て受勲したのを私は新鮮に思ったものでした。
ビデオで見ると、モデルに着せる時のバランスを考えるビビアンは生きた彫刻を作っているように見える程、細心に気を使っていました。彼女の作る服は、着て楽とか、動きやすい・・・とかいう実際的な満足の為ではなく、芸術作品で、形而上のものを具体化したもののようです。
ですから、ブテイックで見るより博物館で見る方がおもしろいように思えました。
